LUXMAN 
 


「彼はデーモンである」
モーツァルトの音楽を聞き終えた直後、そう言い放ったのはゲーテだ。光と闇、
善と悪の交錯。人間を遥か上空から俯瞰するような超人的な音楽をやすやすと
書き上げてしまうモーツァルトに、彼はデーモンの魔力を感じとったのだろう。
オペラ「魔笛」でモーツァルトは人間に永遠の謎を投げ掛ける。善の道を説く聖者
ザラストロに偽善ではないのか、娘を取り戻そうと狂乱する夜の女王ははたして
邪悪なのか、と。明朗な長調と悲痛な短調との表裏一体。相対する二つの想念は
互いに接近し、ろうそくの炎のようにゆらめき、時にその境界をなくす。ここに
は人間の真理がある。若くしてそんな人間の深淵をのぞきこんでしまった音楽家
の魂に、安住の地はあるのだろうか。モーツァルト、それはデーモニッシュな孤独。


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