Technics SL-P999
¥69,800(1988年頃)
¥64,800(1989年4月1日改定)
解説
4DAC20bitシステムを採用したCDプレイヤー。
D/A変換部には微小信号の再現能力を大幅に向上させた4DACリニア20bitシステムを採用しています。
この回路では、LchとRchそれぞれに正信号用のD/Aコンバーターと負信号用のD/Aコンバーターを用いた4DAC構成を採用しており、各成分を個別にD/A変換したうえで差動アンプで合成しています。しそして、4DACプロセッサLSIで正信号と負信号の判別及び切換え動作を行うことで、ゼロクロス点の段差によるゼロクロス歪の問題を原理的に解消しています。
CDからの入力信号に対して不要な高周波成分を除去するデジタルフィルターには、高精度の20bit8倍オーバーサンプリングデジタルフィルターを採用しています。信号レベルを従来の16bit(65536段階)から20bit(1048576段階)に分解することで、微小信号入力時の変換誤差を最小限に抑え、高密度のデータをD/Aコンバーターに送っています。
また、低次のアナログ・ローパスフィルタの使用が可能になったことで、群遅延歪や、ローパスフィルターを構成する素子や半導体による歪の悪影響も大幅に低減しています。
微小信号時のS/N比を改善するためサイレント・デグリッチ回路を搭載しています。
D/Aコンバーターのビット切換え時に生じるグリッチノイズを除去するデグリッチ回路(サンプルホールド回路)を、微小信号時(-12dB以下)にはサンプルモードに固定することにより、微小信号再生の妨げとなるデグリッチ回路自体から生じるスイッチングノイズの問題を解消しています。
サンプルホールド回路、バッファアンプ、ヘッドホンアンプにはclassAA方式を採用しています。
classAAでは、従来1つのアンプで行っていた電圧コントロールと電流ドライブを2つの異なるアンプで分担しており、負荷の影響を受けにくい忠実な波形伝送を可能にすることで、低歪と、中高域の高解像度を実現しています。
ディスク信号面の傷や汚れによるデータエラー対策として8サンプル直線補間を搭載しています。
従来のCDプレイヤーでディスク信号面の傷や汚れによってデータエラーが発生すると、信号処理LSIではエラー量に応じて信号処理を誤り訂正→平均値補間→前値ホールドの順で移行します。
8サンプル直線補間では、データの誤りが連続8個以内であれば、前値ホールドに行こうすることなく直線補間によってノイズ発生を防止しています。
電源回路にはディスクリート・ローノイズアクティブサーボ電源を採用しています。これによって、オーディオ電源の低雑音化、低インピーダンス化、高リップルリジェクションを実現することで電源電圧の微小変動も忠実にフィードバックできるようになり、DACの動作による電源電圧変動を抑え込んでいます。
光デジタル出力端子を搭載しています。
オーディオ回路を構成するパーツは、物理特性と試聴テストの両面から検討を重ねて採用しています。
整流回路にはファースト・リカバリー・ダイオードと大容量オーディオ用電解コンデンサーを使用することで整流ノイズを低減しています。また、オーディオ用グランドにはLchとRchが独立したBUSバーを配置し、グランドラインの低インピーダンス化を図ってます。
さらに、抵抗には非磁性体キャップを用いた新開発の高音質炭素皮膜抵抗を、コンデンサには高音質電解コンデンサを採用しており、低歪間や透明感に加えて音楽性の向上を図っています。
スピーカーから伝わる音圧振動に対しては、メタルシャーシベース、TNRC(テクニクス・ノンレゾナンス・コンパウンド)ベースなどの異種素材から成る多層構造ベースを採用しており、振動エネルギーから熱エネルギーへの変換によって高い防振効果を実現しています。
また、設置台から伝わる床振動に対しては、4つの大型インシュレーターでプレイヤー本体に伝わる振動を遮断し、そのうえで光学デッキをダブルフローティングする多重インシュレーター構成とすることで、大幅な振動減衰を実現しています。
ピックアップを移動させるトラバースメカニズムの駆動部には、高精度リニアモーターを用いたハイスピード・リニアアクセスシステムを搭載しています。マイクロコンピューターを駆使した独自の制御システムに磨きをかけることで高速アクセスを実現しており、操作性を向上するとともに高い耐久性と静粛性を獲得しています。
ピックアップには、レーザー光の利用効率が高く、再生信号のSN比を大幅に向上した独自の1ビーム方式を採用しています。さらに、このレーザーピックアップのCCFレンズには独自の非球面一体成型ガラスレンズを採用しており、ディスク表面の傷や汚れに強い優れた信号読み取り能力と高い信頼性を得ています。
エディットガイド機能を搭載しており、CDからテープへの録音・編集時、使用するテープの長さ(90分/60分/46分)を選ぶだけで、テープのA面、B面に録音できる曲番・曲数・残り時間を自動計算し、せみデュアル・ミュージックマトリックスディスプレイに同時表示します(残り時間は切換え表示)。録音するテープの長さは、エディティングキーによる選択方式のほか、20キーを使って1分から99分まで自由に設定できます。さらに、オートスペースのON/OFFも可能です。
ディスクリンク機能を搭載しており、1枚目のディスクから録音したテープの残り部分に、他のディスクから録音できる曲番・曲数・残り時間を自動計算して表示することができます。
オートピークサーチ機能を搭載しており、ディスク全曲あるいはプログラム曲のピークレベルを自動検出した後、ピーク点の前後約3秒、計約6秒の繰り返し再生ができます。この機能を利用することでデッキ側での的確な録音レベル設定が容易に行えます。
また、プレイ状態で任意の2点(A-B)区間の高精度ピークサーチが可能なABピークサーチも搭載しています。
シャトルサーチを搭載しており、ダイヤルの角度によって1/8倍速から76倍速まで、正逆両方向にそれぞれ4段階のスピードでサーチできます。
ウィンドウ繰り返し再生機能を搭載しており、ポーズ状態でポーズ位置のフレーズ音を出しながら繰り返し再生ができます。再生時間幅はnarrow(約0.2秒間)とwide(約1秒間)が選択できます。
Lch/Rch独立デジタルレベルメーターとプレイングポジションが切換え表示できるディスプレイを搭載しています。
20キーによるダイレクトアクセス機能を搭載しています。
32ステップ・ランダムプログラム、ランダムプレイ、リピート、A-Bリピート、オートキューなどの機能を搭載しています。
ノーマルとランダムの2モードタイマープレイ機能を搭載しています。
4モード切替方式の時間表示機能を搭載しています。
ディスプレイのON/OFFが可能です。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | CDプレイヤー |
チャンネル数 | 2チャンネルステレオ |
出力電圧 | 2.5Vrms(0dB、EIAJ) |
周波数特性 | 2Hz~20kHz ±0.3dB(EIAJ) |
ダイナミックレンジ | 100dB以上(EIAJ) |
SN比 | 113dB以上(EIAJ) |
全高調波歪率 | 0.0023%以下(1kHz、EIAJ) |
高調波歪率 | 0.0015%以下(1kHz、0dB、10次までの高調波成分) |
チャンネルセパレーション | 110dB以上(EIAJ) |
ワウ・フラッター | 測定限界以下(EIAJ) |
ローパスフィルター | 8fs20ビットデジタルフィルター |
誤り訂正方式 | テクニクス・スーパー・デコーディング・アルゴリズム (8サンプル直線補間機能付き) |
トラバース方式 | ハイスピードリニアアクセスシステム |
ヘッドホン出力レベル | 60mW/32Ω(可変) |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 12W |
外形寸法 | 幅430x高さ126.5x奥行338mm |
重量 | 6kg |
付属:ワイヤレスリモコン EUR64727 | |
機能 | 43キー |
使用乾電池 | 単4乾電池1.5Vx2 |