解説　

3チップ構成のMASH・1ビットDACを搭載したデジタルプロセッサ。

D/A変換部には高次オーバーサンプリング技術とノイズシェーピング技術を利用したMASH(multi-stage noise shaping)を搭載しています。
この方式では、まずデジタルフィルタが16ビットデジタルデータをオーバーサンプリングし、折返し成分を高域周波数帯域へ追いやります。そして、次にMASHという多段ノイズシェーピング回路が16ビットのデータをビット圧縮し、そのデータをPWM(Pulse Width Modulation)回路がデータに対応した幅を持つパルスに置き換えます。この時点でローとハイだけの1ビットとなり、振幅方向に相対精度誤差を持たないD/A変換が行われます。これにより、ゼロクロス歪や非直線歪が理論上全くないD/A変換を実現し、低いレベルの信号や、大きな信号に重畳された微小信号が歪なく再現できます。
SH-X1000では、デジタルフィルタとMASH・1ビットDACで1LSI、PWM変換部を含む左右独立DACで2LSI搭載した3LSI構成としており、PWMチップへのデジタルノイズの飛び込みを防止することでチャンネルセパレーションを向上しています。
また、デジタルフィルタ+MASH及びPWMチップの動作クロックを64fsとし、理論ダイナミックレンジ123dBを実現しています。

デジタル伝送系で発生するジッターを解消するため、ジッターフリーインターフェースを搭載しています。
この回路では、まずデータをDSPを介して1.5メガビットRAMに蓄積した後、送り出し側のクロックから独立したクォーツによる高精度クロックでRAMから読み出し、後段のデジタルフィルタ+MASHチップにデータ転送しています。この際にジッターはRAMに蓄積され、読み出し時には原理的にゼロとなります。
また、この回路はRAM使用量が大きい時にやや時間的なズレの発生があるため、RAM使用量にNarrowとWideの2種が設けられており、ソースの周波数偏差の大小で選択ができます。
このインターフェイスはEIAJ規格に準拠しており、他のDATやBSチューナーなどのデジタル機器との接続でも優れた信号伝送が可能です。

ローパスフィルタの位相まわりから生じる群遅延歪みを抑えるためDSPを搭載しており、後段のローパスフィルターと逆特性を持つ位相補正を行うことで全体のリニアフェイズを実現しています。

アナログ回路で行われていたエンファシス回路をDSPで処理するデジタルエンファシスを採用しています。
DSPで処理することで回路のシンプル化を実現しており、S/N比などを改善しています。

入力ソースの周波数偏差が大きい場合は高精度デジタルPLLモードで動作する設計となっています。
DSPに入力されたデジタル信号のVCOからのクロックとの位相差をRAMを用いて検出しており、約10sec周期の位相差出力でVCOをコントロールします。これによりジッターが可聴帯域外へ追いやられ、発振精度の高いクロックの生成が可能となっています。

電源部には、デジタル用とアナログ用にそれぞれ専用の防振構造大型トランスを採用しています。また、アクティブシャント電源を採用しており、回路動作による電源電圧変動を低減しています。

圧変動を極限まで抑え込むことに成功しています。

ラインアウト回路にテクニクス独自のclassAAを採用しています。

ガラスエポキシ基板やオーディオ用PXSコンデンサなどの厳選パーツを採用しています。

機種の定格

型式	D/Aコンバーター
<オーディオ部>
チャンネル数	2チャンネル(ステレオ)
出力電圧	アンバランス:2.5Vrms(EIAJ) バランス:2.5Vrms
周波数特性	2Hz～20kHz ±0.2dB
ダイナミックレンジ	98dB以上(EIAJ)
S/N比	120dB以上(EIAJ)
全高調波歪率	0.0008%以下(EIAJ)
チャンネルセパレーション	110dB以上(EIAJ)
デジタルフィルタ	24ビット高分解能出力8倍オーバーサンプリング
D/Aコンバータ	64fsツインPWM方式8DACシステム
出力インピーダンス	アンバランス:600Ω バランス:600Ω
<入出力>
デジタル入力	EIAJ準拠デジタルオーディオインターフェイスフォーマット 光3系統
サンプリング周波数 (デジタル入力)	32.0kHz±0.1% 44.1kHz±0.1% 48kHz±0.1%
デジタル出力	EIAJ準拠デジタルオーディオインターフェイスフォーマット 光1系統
オーディオ出力	アンバランス出力1系統 バランス出力1系統
<総合>
電源	AC100V、50Hz/60Hz
消費電力	20W
外形寸法	幅484x高さ139x奥行419mm
重量	20kg