SONY ST-JX8
¥70,000(1981年発売)
解説
ソニーのIC技術を結集してシンセサイザーチューナーのクオリティを高めたST-J75のノウハウをベースに、回路・素材を吟味し直し、より高い完成度を目指したシンセサイザーチューナー。
ソニー独自の高速PLL ICによるダイレクトコンパレータを採用しています。
この回路は、220MHzという超高域まで直接分周できる高速PLL ICを採用して、水晶からの比較周波数を一挙に受信ステップと同じ100kHzとしており、これによって比較周波数を、ステレオ信号のメイン信号や38kHzのサブ信号からも大きく離れた帯域に追いやり、ノイズやビートを大幅に低減しています。
また、広帯域レシオ検波をさらにクオリティアップするため専用の検波ドライバーICを採用しており、この出力を広ダイナミックレンジのDCコンポジットアンプに直結することで、検波トランスの前後をしっかり抑え、SN比の向上に大きく貢献しています。
フロントエンドの終端にIF段とのインピーダンスマッチングをとるFETバッファアンプを搭載し、加えて2素子1パッケージのユニフェイズ・フィルターを、段間に差動リミッターアンプを挿入して4個使用しています。
これらの10段相当の差動アンプにより、通過帯域は位相特性に優れ、帯域外は急激に減衰する特性を得て、クリアな音質を保ちながら隣接局妨害を大幅に排除しています。
フロントエンド部はRF相互変調妨害をとくに重視して、5段バリキャップ、デュアルゲートMOS-FETを用いたRFアンプやミキサーをはじめ、オールFET構成が採用されています。
これにより非直線性の排除を徹底化して強電界入力やスプリアス妨害にも安定した受信性能を得ています。
MPX部には、パイロット信号を大幅に除去するパイロット・キャンセル回路内臓PLL-MPX・ICを採用しています。
さらに、15kHz以上の不要信号を除去するため、3ポールリニアフェイズ・フィルターを採用して、低歪率、高セパレーションを実現しています。
また、ハイスルーレートのDCアンプや安定化電源を採用しています。
High/Low/offのミューティングレベル3段切替えスイッチを搭載しています。
ミューティングレベルは、ステレオ放送がほぼ実用になるHighと、モノにすればほぼ実用になるLowの2ステップがあります。また、offにすると自動的にFMブレンド回路が働き、聴感上の感度を向上するSENS機構を搭載しています。
AMチューナー部は、ビート雑音を大幅にカットするノッチフィルターを採用しています。
また、AMIFおよびAF帯域は、Distant/Normal/Localの3段階に切替えが可能で、Muting-offにすればSENS機構が作動し(Distant表示時)、高域ばかりでなく低域もカットして実質感度を向上させます。
マルチプロセスメモリーを採用したFM/AMダイレクト・ランダム8局プリセットを搭載しており、FM/AMの区別なく、どの位置にでも8局までプリセットが可能です。さらに、各局ごとにFM/AMのバンド、ミューティング・SENS、FMモードなどのセッティング状態まで記録可能で、ワンタッチで希望局を最適な受信状態のまま呼び出せます。
このダイレクトランダム選局に加えて、隣接局を自動選局するクイック・サーチ(オート)、ゆっくりと周波数が変るスイープチューン(マニュアル)、ワンタッチごとにFM100kHz、AM9kHzステップで変化するステップチューン(マニュアル)の4スピードチューニング・システムを採用しています。
タイマー対応8局プログラムメモリーを搭載しており、電源スイッチのON/OFFに連動して、最大8局まで指定したプリセット局を順番どおりに次々と呼び出すことが可能です。
これにより、プログラムタイマーを使えば、2つ以上の局にまたがる留守録音も簡単に行えます。
また、プログラムした局、順番を簡単に確認できるメモリースキャン機能、次にスイッチONしたときに呼び出す局を確認できるNEXT
CALLも搭載しています。
メモリーICには、バックアップ電源がいっさい不要dエメモリー内容を半永久的に保持する、ソニー独自の不揮発性メモリーICを仕様しています。
停電の際にも、メモリーが解除される心配がなく、ウィークリータイマーなどでの留守録音にも安心して使用できます。
エアチェックのレベル調整に便利なCAL-TONEスイッチを搭載しています。
強電界表示つき5ステップLEDシグナルインジケーターを搭載しています。
75Ωの同軸ケーブル用のF型接栓を採用したFMアンテナ端子を透視しています。
付属のアダプター(EAD-25)により300Ωフィーダーアンテナも使用可能です。
電源を切った時点で聴いていた局を、電源ONで再び呼び出すラストワンメモリーを搭載しています。
7セグメントのデジタル表示を採用しています。
音質を重視するため、銅メッキ処理ケースと極性表示付無酸素銅電源コードを採用しています。
オーディオアンプ部にはFETバッファによる2電源方式を採用しています。
機種の定格
型式 | クォーツロック・デジタル周波数シンセサイザーチューナー | ||||
回路方式 | PLLデジタル周波数シンセサイザー クォーツロック方式 スーパーヘテロダイン FM/AMチューナー |
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<FMチューナー部> | |||||
受信周波数 | 76MHz~90MHz | ||||
アンテナ端子 | 75ΩF型接栓 | ||||
中間周波数 | 10.7MHz | ||||
SN比50dB感度 | mono:3.8μV(IHF)/16.8dBf(新IHF) stereo:40μV(IHF)/37.3dBf(新IHF) |
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実用感度 | 1.8μV(IHF)/10.3dBf(新IHF) | ||||
SN比 | mono:92dB stereo:86dB |
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高調波歪率 |
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混変調歪率 | mono:0.05% stereo:0.06% |
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ステレオセパレーション | 50dB(100Hz) 60dB(1kHz) 45dB(10kHz) |
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周波数特性 | 30Hz~15kHz ±0.2dB | ||||
実効選択度 | 90dB(400kHz) 60dB(300kHz) |
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キャプチャーレシオ | 1.0dB | ||||
AM抑圧比 | 65dB | ||||
イメージ妨害比 | 120dB | ||||
IF妨害比 | 120dB | ||||
スプリアス妨害比 | 120dB | ||||
RF相互変調妨害比 | 88dB(IHF) 105dB(2.4MHz) |
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キャリアリーク抑圧比 | 78dB | ||||
ミューティングレベル | 25dBf、10μV | ||||
オートチューニングレベル | 25dBf | ||||
出力レベル/インピーダンス | 750mV/600Ω | ||||
<AMチューナー部> | |||||
受信周波数 | 522kHz~1602kHz | ||||
アンテナ | フェライトバーアンテナ、EXT端子付 | ||||
中間周波数 | 450kHz | ||||
感度 | 200μV/m(バーアンテナ使用時) | ||||
SN比 | 55dB(50mV/m) | ||||
高調波歪率 | 0.3% | ||||
周波数特性 | 30Hz~6kHz -3dB | ||||
選択度 | 45dB(9kHz) | ||||
イメージ妨害比 | 45dB | ||||
オートチューニングレベル | 500μV/m | ||||
<総合> | |||||
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz | ||||
消費電力 | 18W | ||||
外形寸法 | 幅430x高さ80x奥行330mm | ||||
重量 | 4.6kg | ||||
付属 | アンテナコネクター EAD-25(300Ω→75Ω変換) フィーダーアンテナ F型プラグ 接続コード 局名表示ラベル(一式) |