SONY TC-K55
¥59,800(1979年頃)
解説
基本性能だけでなく、音質・操作性での総合的完成度を目標に開発されたメタルテープ対応カセットデッキ。
カセットデッキの操作部にマイクロコンピューターを導入しています。これによりメカニズム部の各動作のタイミングは、時系列的に管理されるため、動作が完全に停止してから次の動作に移ります。そのため、カセットハーフ内のテープに無理な力がかからず、テープの伸びを防いでいます。さらに、電磁ソレノイド駆動のため複雑な伝達機構を単純化し、信頼性も高めています。
これらの動作は、まず、各操作モードに合わせてモーターが回転し、ホール素子がマグネット(回転子)の回転数に見合ったパルスを検出します。これをマイコンがカウントし論理的にデジタル処理し、トリガプランジャーを駆動してメカニズムを動作させます。
この動作管理部には、4bit型の42ピンLSI(CPU)が採用されています。これにより、トランジスタを組合わせたディスクリート式によりコンパクト化が図られ、信頼性が高く応答性の速いロジック回路を実現しています。
動作中ストップボタンを押さなくても、直接次の操作に移れるダイレクトチェンジ・オペレーションとなっています。
また、送りボタン、録音ボタン、ポーズボタンはそれぞれの機能が働いている時に点灯するため、容易に動作確認ができます。
ヘッドには、フェライトの高域特性の良さと、センダスト合金の飽和磁束密度の高さを併せ持つS&Fヘッドを採用しています。
また消去ヘッドには、磁気レンズで強力な磁束をテープに加える磁気集束構造のマグネ・フォーカス4Gap消去ヘッドを採用しています。
モーターには、BSL(ブラシアンドスロットレス)モーターを採用しています。
このモーターは従来のDCモーターで問題点となっていたトルクムラを解消するため、磁極を形成するためのスロット(溝)によるコギングを構造上から無くしたもので、ブラシもないシンプルな構造とすることで、静かで滑らかな回転を実現しています。
メカニズム部は、定速走行(FWD)用のBSLグリーンモーターと、早巻き(FF/REW)用のハイトルクモーターを専用化し、複雑な伝達構造を排除したシンプルな構造としています。これにより信頼性を高めるとともに、回転ロスを少なくし、周波数サーボ方式と相まって安定した走行を実現しています。
また、この2モーター方式のメカニズムの信頼性をさらに高めるため、各動作を電磁ソレノイド駆動としており、操作ボタンのロック機構やアイドラなどの伝達機構の簡素化をすることで信頼性を高めています。
ノイズリダクションシステムとして、ドルビーNRを搭載しています。
採用されたドルビーICには、ラインアンプや録音イコライザーアンプなども内蔵しており、素子としては160個相当分が集積されています。これにより複雑な回路の引き回しが回避でき、音質の向上が図られています。また、録再切替えスイッチも省略できあるため、アンプ部の信頼性が向上しています。
テープ走行の乱れの要因となるリール台のトルクムラを排除するため、磁力によってリール台にトルクを伝達させる無接触マグネットクラッチを採用しています。これにより、機械的摩擦が無いため、安定したトルクを確保でき、それと同時にメカニズムの信頼性を向上させています。
FMエアチェックの際に19kHzのパイロット信号でドルビーNR回路が誤動作するのを防ぐため、パイロット信号をカットするMPXフィルタースイッチを搭載しています。
アンプ部には±2電源方式を採用しており、さらにS&Fヘッドとアンプ部をダイレクトカップリングすることで低歪と優れた高域特性を実現しています。
オートスペース付きRec Mute機能を搭載しており、録音ソースをカットし、最適な曲間スペースを作り、自動的に一時停止の状態に切替ります。
また、4秒以下のブランクを作りたい時は、一時停止ボタンを押して解除、4秒以上のときは、押し続けるとその間だけブランクが作れ、指を離すと一時停止に切替ります。
オートプレイ/メモリープレイ機能を搭載しています。
後追い録音機能を搭載しており、テープの途中まで再生しその後から録音したい時、送り(FWD)ボタンと録音(REC)ボタンを同時に押すことで、すぐに録音状態に入ります。
VUメーターでは指示しきれないパルシブな信号にも対応するため、-8/-3/0/+2/+4dBの5段階で表示するピークレベルインジケーターを搭載しています。特に、+4dBはVUメーターの+8VU相当なため、メタルテープの飽和レベルを生かした録音レベルのセッティングができます。
指示誤差が少なく、音量感に比例して追従するツインVUメーターを搭載しています。
ライン入力時のSN比が大幅に向上するマイク/ライン入力切替えスイッチを搭載しています。
バイアス/イコライザー独立4段切替えのテープセレクターを搭載しています。
イコライザーはType-I(normal)、Type-II(CrO2、JHFカセット用)、Type-III(Fe-Cr、DUADカセット用)、Type-IV(メタル)の4段階で、バイアスはnorma(I/III)とLow/High(II)、Metal(IV)の4段階となっています。
テープの残量を確認できるシースルーランプを内蔵しています。
メカやテープを傷めないオートシャットオフメカニズムを採用しています。
別売りタイマーを使用することで、連続留守録音や目覚まし再生ができます。
別売りのリモートコントロールユニットにより、離れた場所からの操作が可能です。
機種の定格
型式 | ステレオカセットデッキ |
トラック形式 | 4トラック2チャンネル |
ヘッド | 録再:S&F 消去:F&F |
モーター | BSLグリーンモーター ハイトルクモーター |
サーボ方式 | ホール素子検出周波数サーボ |
ワ・フラッター | 0.04%WRMS |
周波数特性 (メタルテープ) |
20Hz~19kHz 30Hz~13kHz ±3dB(0VU録音時) |
SN比 | 59dB(ドルビーoff、ピークレベル、DUADカセット) |
歪率 | 1.0%(DUADカセット) |
入力端子 | Mic:0.25mV(-70dB)/ローインピーダンスマイクに適合 Line:77.5mV(-20dB)/50kΩ |
出力端子 | Line:0.435V/50kΩ Headphone:-28dB/8Ω負荷 |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 16W |
外形寸法 | 幅430x高さ130x奥行290mm |
重量 | 5.2kg |
付属 | ステレオ接続コード2本 ヘッドクリーニング棒 |
別売 | ワイヤードリモコン RM-50(¥6,000) |