SONY SDP-EP9ES
¥88,000(1997年発売)
解説
ソニーのデジタル技術を結集したデジタルシネマサウンドを搭載したドルビーデジタルプロセッサー。
Digital Cinema Sound
ソニーならではの開発環境を活かして提唱されたDigital Cinema Sound技術を搭載しています。
SDP-EP9ESではシネマスタジオ・モードとバーチャル3D・モードの2つを搭載しています。
シネマスタジオ・モード
シネマスタジオ・モードはサウンドデザイナーが映画の音作りを行うミキシングスタジオの音を再現するモードで、ソニー・ピクチャーズエンターテインメントの持つスタジオの中からタイプの異なる3つのスタジオをセレクトし、シネマスタジオA・B・Cとして搭載しています。
シネマスタジオAはソニー・ピクチャーズエンタテインメントの中で最も伝統のあるCary
Grant Theaterの音響特性を反映してます。このシアターは通常の中規模な映画館と同等の容積を持っており、360チャンネル入力と72のミックスアウトのコンソールを常設しているほか、最先端のデジタルハードディスクレコーダーなども装備しています。
このエディティングシアターではアメリカン・プレジデントやザ・ファンなどの映画が編集されました。
シネマスタジオBはハリウッドにある各映画会社のミキシングスタジオの中でも最先端クラスの音響設備を備えているKim
Novak Theaterがベースとなっています。このシアターでは現在使用されている全ての出j値ある映画音声フォーマットに対応できるほか、CGなどの新しい演出の映像に対応したサウンドデザインを行うことができます。
このエディティングシアターではジュマンジなどの映画が編集されました。
シネマスタジオCは映画のBGMなどの音楽を収録するスコアリングスタジオの音響特性を再現しています。
音楽の多い映画やミュージカル作品の鑑賞に適した音場特性を持っており、風と共に去りぬの音楽もこのスタジオで収録されました。
バーチャル3D・モード
バーチャル3D・モードでは映画館ならではの音場を3次元音響テクノロジーを駆使してより積極的に創りだすことができます。
SDP-EP9ESではバーチャル・マルチリアモード、バーチャル・リアシフトモード、バーチャル・エンハンスドサラウンドモードA/Bの4種類を搭載しています。
バーチャル・マルチリアモードでは、一組のリアスピーカーだけで沢山のリアスピーカーを配置したような音場を再現できます。これによりマルチリアスピーカー設置の映画館でしか味わえない音に包み込まれるような音場感が再現できます。
また、リアスピーカーの設置位置は2通りを想定しており、リアスピーカーを横に設置した場合はそれより後方に、リアスピーカーを後方に設置した場合はスピーカーより前方に向かって複数スピーカーを配置したような音場を作ります。
バーチャル・リアシフトモードではスケール感の大きいサラウンド空間を楽しめます。
このモードでは音源を実在しない位置に仮想的に移動させることで、たとえ壁があっても壁を通り越した位置に配置したように音源を仮想的に定位させます。具体的には部屋が後方により広くなった感覚で楽しめます。
バーチャル・エンハンスドサラウンドモードはフロントスピーカーだけでリアの音を後方に定位させることができ、リアスピーカーの設置がむずかしいケースで大きな効果を発揮します。
このモードにはA/Bの2タイプのバリエーションがあり、Aタイプでは後方に複数の仮想リア音像を定位させることができ、Bタイプでは後方に定位させることができます。
その他
コンサートホールやライブハウスの音場を再現するため、その他のDSPモードについても搭載しています。
デコーダー回路には最新のプロセスを用いた高精度24ビットDSPを採用しています。
このDSPは全ての内部演算を24ビット以上の精度(24ビットx24ビット=56ビット)で行うことができ、毎秒4,400万回の演算能力を持つことで複雑な計算を繰り返すドルビーデジタルのデコードにおいても十分な精度を保っています。これによりドルビーデジタルのもつ120dBというダイナミックレンジを生かしたサウンドの再現を可能にしています。
また、このDSPは消費電力が比較的少なく、ノイズの発生も相対的に少ないためアナログ回路への影響を小さく抑えられています。
バス・リダイレクション機能を搭載しています。
ドルビーデジタルではL、C、R、SL、SRそれぞれの信号が3Hz~20kHzの帯域を持っているため、全てのスピーカーは広い再生帯域を持つスピーカーを使うのが理想です。しかし、実際にスピーカーを設置するのはスペース的に困難な場合が多いため、システム構成に合わせたセッティングが行えるよう低域をほかのスピーカーに振り分けるバス・リダイレクション機能がフォーマット化されています。これにより、例えばリアに小型スピーカーを使用する場合には、リアの低域成分だけを抽出してサブウーファーなどのスピーカーに担当させることができます。
SDP-EP9ESでは、フロント大/小、センター大/小、リア大/小、サブウーファー有/無で考えられる全16通りの組合せ全てに対応しています。また、低域抽出のためのクロスオーバーネットワーク処理はデジタル段階で24ビット処理のDSP内部で行っており、音質劣化を最小に抑えています。
ボリュームには新開発のデジタルiボリュームを搭載しています。
デジタルiボリュームはD/Aコンバーターとして搭載されたカレント・パルスD/Aコンバーターの基準電流源の電流値をマイコンでコントロールされたスタティックD/Aの出力で制御する構造となっています。これによりデジタルデータの分解能を保ったまま全体の音量を任意に調節できます。また、全体の音量だけでなく、バランス調節なども全てデジタル領域で処理されます。
フロントパネルのボリュームはボリューム位置検出用としてマイコンに接続されており、オーディオライン上にはチャンネル間のバランス調節用ボリュームを含め一切アナログのボリュームが存在しません。
ジッターフリーD/Aコンバーターシステムを搭載しています。
プロセッサーのようなデジタル信号処理機では、ソース機器から送られてくるクロック信号を抽出し、それに同期したマスタークロックを生成し、D/Aコンバーターなどを動作させています。しかし、このソース機器から送られてくるクロック信号にはジッターが含まれている場合があり、音質上の悪影響を及ぼします。従来はこの影響を低減するため、クロック信号の抽出とジッター補正をアナログのPLL回路で行なっていましたが、補正を行ったとしても基本的には入力信号に追従していることに変わりがありません。
SDP-EP9ESではこの問題の根本的な解消を図るため、入力系クロックとD/Aコンバーターのマスタークロックを分離しています。これによりD/Aコンバーターは独自に設けたマスタークロックで動作するためジッターとは無縁となり、安定したD/A変換が行えることで優れた音質を獲得しています。
この処理はサブウーファーも含めて6つのチャンネル全て同じクオリティの回路で行なっています。
D/A変換部にはフル・フィードフォワード方式デジタルフィルター及び6ch独立カレント・パルスD/Aコンバーターを採用しています。SDP-EP9ESでは高品位なD/A変換を実現するため、メイン基板の約3分の2をD/A変換部が占めています。
デジタルフィルターではまずディスクから得たデータとデータの中間点に最初の補完データを生成し、できたデータを使って次の補完データを作るという2倍型のデジタルフィルターを3段階連結した方式が採用されていました。しかし、生成された補完データは元になったデータよりはるかに細かい値が含まれているため、そのまま次段に引き渡すと回路規模が大型となっていまします。ここで従来のデジタルフィルターでは演算結果の下位ビットを四捨五入して上位ビットだけを渡す方法を採用していたため、四捨五入による誤差で再量子化ノイズが発生していました。
フル・フィードフォワード方式デジタルフィルターでは、四捨五入された下位ビットを別ルートで伝送してメモリーし、次段の演算結果と合成するフル・フィードフォワード演算を行うことで下位ビットのデータも反映したオーバーサンプリング演算を実現しています。これにより可聴帯域内での再量子化ノイズをほぼ完全に除去しています。
パルスD/Aコンバーターでは入力されたデジタルデータを高密度のパルス列に変換し、得られたパルス列をローパスフィルターに通すことでオーディオ信号を再現しています。しかし、このパルス列の高さを表す電圧値はD/AコンバーターICに加えられている電源電圧そのものなため、電源電圧が変動するとパルス出力にも影響が出てしまいます。しかもD/Aコンバーター内部のデジタル演算回路などが発生するノイズもパルス出力にノイズとなって現れて音質に影響を及ぼしていました。
カレント・パルスD/Aコンバーターでは、まず安定したきれいな電流源を用意し、パルス生成器の出力を利用してスイッチングすることで電流パルスを生成しています。こうして得られた電流パルスは電圧変動とは無縁で、しかも演算回路の電圧性ノイズの影響も受けません。
デジタル領域で高音/低音の音質調節ができるデジタルトーンコントローラーをフロント/センター/リアの各チャンネルそれぞれ独自に搭載しています。しかも拡張メニューモードではターンオーバー周波数を任意のポイントに設定できます。また、ワンタッチで低音の迫力を増すベースブースト機能も装備しています。
これらの処理はドルビーデジタルのデコード同様に24ビット精度のDSPで行なっています。
バイパス入力端子を搭載しています。
電源がOFFの時と入力セレクターでBYPASSを選択した時には、バイパス入力端子に接続された機器の信号をそのまま出力できます。
シャーシにはFBシャーシを採用しています。
FBシャーシでは十分な強度と厚みを持ったメタル材を使用し、フレーム(Frame=枠)と左右に渡したビーム(Beam=梁)でシャーシ全体を1つの箱として強固に固めています。また、それぞれ異なる形状と大きさとすることで固有振動モードを違えた部材を組み合わせており、固有振動を相互に打ち消し、シャーシ全体としての振動を大きく低減しています。
内部のビームは電源トランスと回路基板を分離するシールド板の役目も持っており、オーディオ信号への干渉を防いでいます。
脚部には偏心インシュレーターを採用しています。
このインシュレーターはセンター位置を避けてビス穴を設けることで伝わる振動の位相を変えており、打ち消すことでシャーシに伝わりにくくしています。
電源トランスには小電力機器であるプロセッサー用としてはかなり大型のタイプを使用しています。
殆どの操作は「メニュー」と「+/−」の2つのロータリーエンコーダーで行うことができ、操作性向上を図っています。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
機種の定格
型式 | ドルビーデジタルプロセッサー |
サラウンドモード | 下記サラウンドモード一覧表参照 |
ドルビープロロジックインプットバランス | オート |
トーンコントロール | フロント、センター、リア独立 Bass:±10dB(中心周波数99~992Hz) Treble:±10dB(中心周波数1.0k~8.6kHz) 増減ステップ:0.5dB |
バスブースト | +5dB(60Hz) |
デジタル入力 | 光:3系統 同軸:1系統 AC-3 RF:1系統 |
デジタル出力 | 光:1系統 |
バイパス入力端子 | 1系統 |
オーディオ出力 | Front L/R:1系統 Center out:2系統 Rear L/R:1系統 Subwoofer:2系統 |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 40W |
外形寸法 | 幅430x高さ98x奥行355.5mm |
重量 | 約6.5kg |
付属 | ワイヤレスリモコン RM-EP9 |
サラウンドモード | 得られる効果 |
Dolby Pro Logic | ドルビープロロジック処理されたプログラムの再生用です。2chのソースにプロロジック処理を行う場合使用します。 |
Dolby Enhanced Pro Logic | プロロジックなどリアがモノラルの場合に使用すると臨場感が増します。リアチャンネルに対して擬似ステレオ処理を行います。 |
Large Theater | 一般的な映画館の音響特性を再現します。 |
Cinema Studio A | ミキシングスタジオ「Cary Grant Theater」の音響特性を再現します。スタンダードな映画鑑賞のモードです。 |
Cinema Studio B | ミキシングスタジオ「Kim Novak Theater」の音響特性を再現します。効果音の多いSFX、アクション映画の鑑賞に適しています。 |
Cinema Studio C | 音楽収録用のスコアリングステージの音響特性を再現します。音楽を多用したクラシック、ミュージカル映画の鑑賞に適しています。 |
Virtual Multi Rear(A・B) | 複数のリアスピーカーを配置しているかのような音場を再現します。仮想音源を後方(A)または側面(B)に向け展開します。 |
Virtual Rear Shift(A・B) | リアスピーカーの位置を後方(A)または側面方向外側(B)にシフトさせます。 |
Virtual Enhanced Surround A | フロントスピーカーのみで後方に複数の仮想リア音像を定位させます。 |
Virtual Enhanced Surround B | フロントスピーカーのみで後方に2つの仮想リア音像を定位させます。 |
Large Hall | クラシックなど用にコンサートホールの音場を再現します。 |
Live House | ライブコンサートなど用にライブハウスの音場を再現します。 |
※はメニューモードが拡張モード時に調節可能。*はベーシックモードのみ可能 | ||
パラメータ名 | メニューエンコーダー | +/−エンコーダー |
SP.SETUP | Front SP(フロントスピーカーサイズ) | Large/Small |
Center SP(センタースピーカーサイズ) | Large/Small/No | |
Rear SP(リアスピーカーサイズ) | Large/Small/No、Behind/Side | |
Sub Woofer(サブウーファーの有無) | Yes/No | |
Front(フロントスピーカーと視聴位置の距離) | 1~12meter<0.1mステップ> | |
Center(センタースピーカーと視聴位置の距離) | 0~12meter<フロント-1.5m~フロントまで> | |
Rear(リアスピーカーと視聴位置の距離) | 0~12meter<フロント-4.5m~フロントまで> | |
※Front SP(フロントスピーカーカットオフ周波数) | Small=60Hz~200Hz<60・80・100・120・150・200Hz> | |
※Center SP(センタースピーカーカットオフ周波数) | Small=60Hz~200Hz<60・80・100・120・150・200Hz> | |
※Rear SP(リアスピーカーカットオフ周波数) | Small=60Hz~200Hz<60・80・100・120・150・200Hz> | |
Level Adjust | Test Tone(バランス調節用テストトーン) | Auto→L→C→R→SR→SL/Off |
Front(フロントスピーカーバランス) | ±8.0dB<0.5dBステップ> | |
Rear(リアスピーカーバランス) | ±8.0dB<0.5dBステップ> | |
Rear Level(リアスピーカーレベル) | -20.0dB~+10.0dB<0.5dBステップ>/Mute | |
Center Level(センタースピーカーレベル) | -20.0dB~+10.0dB<0.5dBステップ>/Mute | |
Sub Woofer(サブウーファーレベル) | -20.0dB~+10.0dB<0.5dBステップ>/Mute | |
Surround | Surr.Effect(サラウンドエフェクトレベル) | 0%~100%<5%ステップ> |
LFE Mix.(重低音ミックスレベル) | -20.0dB~+0dB<0.5dBステップ>/Mute | |
D.Range Comp(ダイナミックレンジ圧縮レベル) | OFF/0.1~0.9<xxxステップ>/STD/MAX | |
*Tone Control | ON/OFF | |
*Bass | ±10dB | |
*Trble | ±10dB | |
Equalizer | ※Equalizer | ON/OFF |
※Front Bass | 99Hz~992Hz<21ポイント>、±10dB<0.5dBステップ> | |
※Front Treble | 1.0kHz~8.6kHz<21ポイント>、±10dB<0.5dBステップ> | |
※Center Bass | 99Hz~992Hz<21ポイント>、±10dB<0.5dBステップ> | |
※Center Treble | 1.0kHz~8.6kHz<21ポイント>、±10dB<0.5dBステップ> | |
※Rear Bass | 99Hz~992Hz<21ポイント>、±10dB<0.5dBステップ> | |
※Rear Treble | 1.0kHz~8.6kHz<21ポイント>、±10dB<0.5dBステップ> | |
Costomize | Muting | ON/OFF |
Disp.Dimmer | 25%~100%<1%ステップ> | |
Dist.Unit(距離の単位) | Meter/Feet | |
EQ Memory | ON/OFF | |
Memory Clear | Yes/No | |
Menu Mode | Basic/Expand(基本/拡張) | |
※Input Trim(デジタル入力比率調節) | +5.0dB~-5.0dB、±10dB<0.5dBステップ> | |
※Decode Mode(デジタル入力デコードモード) | Auto/AC-3 |