OTTO/SANYO DCC-3001
¥200,000(1970年代中期頃)
解説
歴史の中に生き続けるアンプの一つを目指し、絶対精密をテーマにして開発されたコントロールアンプ。
DCC-3001では多量の負帰還によるTID(過渡混変調歪)の改善を図っており、終段までそれぞれのステージでローカル負帰還をかけるなどの対策を行って裸特性を改善し、これらをカスケードにつないで最少のオーバーオール負帰還で最良のオーバーオール特性を得ています。こうすることで深いオーバーオール負帰還を用いた場合に不可欠な発振防止用の遅れ位相補正コンデンサを排し、優れたスルーレイトを達成しています。
また、初段差動アンプの両エミッタにローカル負帰還として高抵抗を挿入することで初段でのダイナミックレンジを拡大しており、同時にこの段に挿入された進み位相補正回路の効果と相乗して裸特性を改善、帰還無しでも使えるほどに改善しています。
イコライザ回路は完成度の高いパワーアンプ回路をそのまま移植した形となっています。
差動増幅二段と、カレントミラー型位相反転A級プッシュプル方式の出力段で構成された全段直結方式を採用しており、電源電圧の変動によるバイアスの変動を防ぐため、初段と二段目の差動アンプともにトランジスタによる定電流回路が設けられた構成となっています。完全対称のカレントミラー回路によって中点電位の変動は厳しく抑えらており、初段の差動アンプのベースに抵抗と直列に挿入されている100%DC帰還用のコンデンサを除去し、ACからDCまで同一の負帰還とすることで低域の過渡応答を改善しています。
この回路では40dBの増幅度と500mVの大きな許容入力を達成しています。この大きな許容入力は入手し得る最高耐圧級のトランジスタを用いて±75Vもの高電源電圧をかけ、さらに二段目の差動アンプを初段の差動アンプと同極性のPNP構成としたことによってこの間の電圧配分をフリーに決められるようにしたこと、初段でかなりのローカル負帰還をかけることで増幅度を下げていることなどによっています。
また、ノイズレベルは入力換算でトランジスタ自体の物性的なノイズレベルである1.5μV以下という値になっており、これ以上の改善はトランジスタの改善しかないというレベルを実現しています。使用トランジスタは経年変化による雑音増加を避けるため全てキャンシールタイプを採用しています。
RIAA偏差はDランク(0.5%超精度)のNiCr蒸着抵抗とスチロールコンデンサを使って30Hz~15kHzで±0.1dB以下に抑えられています。
1Wモニター用パワーアンプを内蔵したコントロールアンプとしては珍しい構成となっており、単体での使用が可能です。
このモニターアンプは完全A級動作で、初段差動増幅、二段エミッタ接地ドライバ、出力段ダーリントン・エミッタフォロアーによるコンプリメンタリーSEPP方式となっています。電源電圧はドライバ段に±35V、出力段に±6Vと真空管風のやり方で印加されています。このアンプ回路はチャンネル当たり7個のトランジスタと5個のダイオードで構成されています。
パワーアンプ部もDC-AC同一負帰還のDCアンプ構成を採用しており、100%DC帰還用のコンデンサや高域カットコンデンサもありません。これによりスルーレイトも海外の200W級パワーアンプに匹敵する15V/μsを達成しています。
トーンアンプはNF型完全A級で、初段はトランジスタ定電流回路を有する差動アンプ、ドライバ段はトランジスタ定電流負荷を備えたエミッタ接地回路、出力段はコンプリメンタリーSEPP方式で構成されており、±2電源を用いて増幅度20dBとなっています。
トーンコントロール素子も厳選したものを使用しており、誘導やクロストークを考慮して低インピーダンス設計となっています。
この回路は7トランジスタと5ダイオード構成で基本回路はモニターアンプとほぼ同一の構成となっています。
トーンコントロール素子はイコライザ同様にNFループに挿入する方式を採用しており、全てのカーブに独立のCRを用いて時定数を変えることで非常に精密なカーブを得ています。
トーンアンプ部にはディフィートスイッチを備えています。
フィルターはハイ・ローともにPNP-NPNの二段直結型を採用しており、DC-AC100%負帰還による0dB増幅度のアンプとなっています。通常のエミッターフォロアー段型に比べて大振幅時でも歪まず、定格出力2.0Vまで0.01%の歪率を保証しています。
ハイカットの7kHzはテープヒスやレコードノイズをカットして音質を損なわないぎりぎりの周波数であり、16kHzはメインアンプでのTIDの発生を抑えるための高速信号カット用のスーパーソニックフィルタとなっています。
ローの30Hzはランブル用で、15Hzはサブソニックフィルターでうs.
ラウドネス回路はトーンアンプと同様に4dBステップ11段階の全てに独立したディスクリート素子を使用し、ボリューム指示値と実際の減衰量の偏差は±0.1dBの精度内に納めています。
ボリュームはメインボリュームと完全に独立しており、好みや部屋の音響特性に合わせた最適音量から連続的に絞り込めるコンティニュアスタイプとなっています。
ボリュームには±0.1dBの超精密級のディテントボリュームを採用しています。
オーディオミューティングは20dBで増幅度20dBのトーンアンプをバイパスする方式になっています。
このため、フィルター回路をOFFにした状態でこのスイッチをONにするとイコライザの出力がダイレクトに得られます。
電源回路にはカットコアトランスを使用し、10トランジスタ、17ダイオードを用いた当時最も贅沢なものとなっています。
また、電源のON-OFFに対してはリードリレーを用いた純電子式電源ミューティング回路を内蔵しています。
機種の定格
型式 | コントロールアンプ |
<プリアンプ部> | |
回路方式 | イコライザ:差動二段カレントミラ方式、A級SEPP出力 トーンコントロール:差動一段、SEPP出力 フィルタ:コンプリメンタリ直結二段フィルタ方式 |
入力感度/インピーダンス | Phono1:2mV/33、47、100kΩ Phono2:2mV/47kΩ Tuner、Aux1、2:200mV/47kΩ Tape1、2、3:200mV/47kΩ |
Phono RIAA偏差 | ±0.1dB |
Phono ダイナミックレンジ | RMS:500mV(1kHz) P-P:1,400mV(1kHz) |
出力レベル/インピーダンス | Tape1、2:100mV/47kΩ Tape3:200mV/1kΩ以下 Output:200mV/50kΩ |
周波数特性 | 10Hz~100kHz +0 -1dB(Tuner、Aux、Tape) |
SN比 | Phono1、2:-120dB(入力換算) Tuner、Aux、Tape:-120dB(入力換算) |
全高調波歪率 | 0.02%(定格出力時) |
トーンコントロール | Bass:±10dB、2dBステップ Treble:±10dB、2dBステップ |
ラウドネス | コンティニュアス方式、4dBステップ、11ポジション |
サブソニックフィルター | 15Hz、18dB/oct |
ローフィルター | 30Hz、18dB/oct |
ハイフィルター | 7kHz、12dB/oct |
スーパーソニックフィルター | 16kHz、12dB/oct |
オーディオミューティング | -20dB(トーンアンプ・バイパス方式) |
<モニターアンプ部> | |
回路方式 | RF差動一段A級SEPP OCL方式 |
実効出力 | 1.0W(2ch動作、8Ω) 1.0W(1ch動作、8Ω) |
実効連続出力 | 1.0W(2ch動作、8Ω) |
全高調波歪率 | 0.05%(定格出力時) |
混変調歪率 | 0.05%(定格出力時) |
出力帯域幅 | DC~300kHz (THD 0.1%) |
周波数特性 | DC~1MHz +0 -1dB |
残留ハム&ノイズ | 0.2mV |
スルーレイト | 15V/μs |
ダンピングファクター | 20 |
推奨負荷インピーダンス | 4Ω~16Ω |
<総合> | |
使用半導体 | トランジスタ:80個 ダイオード:41個 |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 40W |
外形寸法 | 幅470x高さ186x奥行400mm |
重量 | 15kg |