Pioneer F-120D
¥49,800(1985年頃)
解説
FM信号そのものをデジタルで一気に復調し、歪や雑音を原理的に発生させないデジタル・ダイレクト・デコーダーTypeIIを搭載したFM/AMステレオチューナー。
デジタル・ダイレクト・デコーダーはIF部を出た信号をパルス変換器で1.26MHzのデジタル信号に変換し、そのまま一気にステレオ復調の掛算器を送って38kHzのサブキャリア(正弦波)と掛算するというシンプルな方式となっています。
FM信号はパルス変換器以降ステレオ復調までデジタル信号のままで検波・復調といった行程を行うため、信号の欠落や歪の原因となっていたアンチバーディフィルターも不要となり、歪や雑音などが発生しないデジタル信号の特性を最大限に活用することによって優れた特性を得ています。
このD.D.レコーダーは、優れた諸特性により、スウェーデン国立放送局のモニター機に選定されるなど、優れた実力を持っていました。
そして、F-120Dではさらにデジタル信号の波形そのものまで検討を加えたデジタル・ダイレクト・デコーダーTypeIIを搭載しています。
FM信号をデジタル信号に変換するパルス変換部にC-MOS ICを採用し、デジタル波形そのものの精度を向上させ、より一層の定歪率・高SN比を実現しています。
フロントエンド部には、RF相互変調特性の向上のためにリニアフロントエンドを採用しています。高性能ツインバリキャップと独自のバランスホールドコンデンサー方式により、高い受信性能を実現しています。
また、バランスドミキサーの搭載で高安定度を実現したほか、各種妨害排除能力も大幅に高めています。
さらに、アンテナ同調段とローカル発振部の両周波数間を常にリニアな関係に保ち、歪の発生を抑えるために、独自のトラッキングオシレーター回路を搭載しています。
IF部では、初段アンプにはダイナミックレンジが広く、高利得、低雑音のダーリントン差動ICを採用し、高利得と高SN比を獲得しています。
さらに、D.D.デコーダーTypeIIに信号をおくる重要なセクションである周波数コンバート部(1.26MHz)の発振回路に、信頼性の高い水晶発振回路を採用し、安定性とSN比を高めると同時に、温度や湿度の環境変化によるドリフトなども抑えています。
これらに加え、受信条件の違いに応じて常に高水準のクオリティが得られるよう、IFバンドの2段切換えも搭載しています。
D.D.デコーダーTypeIIの高音質をさらに生かすため、パーツを含めたオーバーオールに磨きをかけています。
パルス変換器以降は出力部まで完全なLCフィルターレスとし、LCフィルターに起因する歪や音質劣化を根本的に無くしています。
また、F-120で採用したチューナー専用の半導体コンデンサーをさらに改良を加えており、外装をエポキシコーティングすることで振動を抑え一層の低歪率を実現しています。
さらに、トランスにはアンプ並みの大型電源トランスを搭載し、無酸素銅線使用の電源配線、極性表示付電源コードの採用など、電源部にも十分な見直しを行っています。
最終段のローパスフィルター部ではコイル使用のパッシブフィルターに替えてアクティブフィルターを採用し、より高い音質を得ています。
クォーツシンセサイザーのPLL回路には独自のパルススワロー方式を採用しており、基準周波数を25kHzに設定しており、可聴帯域外へおいやることにより、基準周波数が信号ラインへ残留し、ノイズとなる原因を解消しています。
デジタルコントロール信号の伝送にはフルスタティックコントロール方式を採用しています。
1本の信号線には1つのデータしかのせないため、SN比の劣化を抑えます。
AM用大型ループアンテナを採用し、さらに同調コイルにFETバッファを使用するなどすることで、150μV/mという高感度を実現しています。
ワイドレンジセラミックフィルターなどの採用により、充実したAM部を実現しています。
FM/AM各8局と、FM+AMランダム8局と、FM+AMランダム8局をリアパネルのスイッチで選べるランダム/イー地プリセットを搭載しています。
受信状態を適度に確認できる3ステップ・シグナルインジケーターを搭載しています。
写真のサイドウッドは別売りです。
ブラックモデルの他にシルバーモデルもありました。
機種の定格
型式 | D.D.デコーダーTypeII搭載FM/AMチューナー |
<FMチューナー部> | |
S/N比50dB感度 | mono:1.77V、新IHF 16.2dBf stereo:21.0μV、新IHF 37.7dBf |
実用感度(Narrow、75Ω) | mono:0.95μV、新IHF 10.8dBf |
SN比(85dBf入力時) | mono:98dB stereo:90dB |
高調波歪率(Wide) | mono:0.008%(100Hz)、0.006%(1kHz)、0.01%(10kHz) stereo:0.01%(100Hz)、0.009%(1kHz)、0.05%(10kHz) |
キャプチャーレシオ | Wide:0.8dB Narrow:2.5dB |
実効選択度 | Wide:30dB(400kHz) Narrow:60dB(300kHz) |
ステレオセパレーション | Wide:70dB(1kHz)、54dB(20Hz~10kHz) Narrow:40dB(1kHz)、40dB(20Hz~10kHz) |
周波数特性 | 20Hz~15kHz +0.2 -0.8dB |
イメージ妨害比 | 70dB |
IF妨害比 | 100dB |
スプリアス妨害比 | 80dB |
AM抑圧比 | 70dB |
サブキャリア抑圧比 | 65dB |
ミューティング動作レベル | 5μV(25.2dBf) |
アンテナ入力インピーダンス | 75Ω不平衡型 |
<AMチューナー部> | |
実用感度 | 150μV/m(内蔵アンテナ) |
選択度 | 25dB(±9kHz) |
SN比 | 55dB |
<総合> | |
出力レベル/インピーダンス | FM(100%変調):650mV/900Ω AM(30%変調):150mV/900Ω |
電源電圧 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力(電気用品取締法) | 14W |
外形寸法 | 幅420x高さ61x奥行312mm |
重量 | 4.5kg |
別売 | サイドウッド JA-F120(¥2,500) |