Pioneer PL-88F/PL-88FS
PL-88F:¥79,800(1982年発売)
PL-88FS:¥74,800(1983年発売)
解説
プログラム機能を搭載したフロントローディングタイプのフルオートプレイヤー。
フロントローディング機構を採用しています。
この方式ではフォノモーターとトーンアームを搭載したスライダーが手前へ滑り出てくる構造となっています。これにより従来の開閉式ダストカバーのようにスペースの制約を受けず、オーディオシステムのコンパクト化やより自由なレイアウトを可能にしています。
スライダーの出し入れは前面コントロール部のタッチキーで行うようになっており、専用モーターによってスムースな動作を実現しています。また、前面ドアはスライダーの動きに合わせて自動開閉するものとなっています。
また、スライダーにはコアキシャルサスペンション方式を採用しており、モーターとトーンアームを固定したアンダーボード全体をスプリングとゴムでサポートする事でスピーカーの音圧や床の振動による影響を抑えています。
キャビネット部は約40kgの積載が可能な強固な構造となっています。
プログラム演奏機能付きのマイコン制御フルオート機構を搭載しています。
プログラム自動演奏機能では5曲目から1曲目へ、1曲目から3曲目など、レコードの曲を好きな順番で聴くことができます。また、曲のイントロだけを次々に再生するインデックススキャンや、演奏中の曲をカットして次の曲へ移るスキッププレイ、プログラムした曲を繰り返し再生するリピート再生などをマイコン制御によって行えます。
この機能は光学式デュアルアイセンサーとアーム駆動用水平DDモーターで実現しています。
デュアルアイセンサーではアームの先端に2つのセンサーを装備しており、レコード盤面からの光の反射率を読み取る事で曲間の中心を検出しています。この信号に基いてアーム駆動を受け持つサーボシステムが動作し、針先を確実に曲間の中心へ降下します。これにより偏心のあるレコードでも曲の途中へ降りるトラブルを防いでいます。
プログラム演奏は光学式のアドレスセンサーによって実現しています。
これはアームの根元に取り付けられた扇形のスリットと光学式センサーを組み合わせたものです。レコードをターンテーブルにセットして聴きたい曲をプログラムしてからスタートボタンを押すと、トーンアームは自動的にレコード盤上を横切ってリードアウトします。この時にデュアルアイセンサーが曲間を検出し、その位置をアドレスセンサーがスリットの番地として検知し、マイコンに記憶されます。
プログラム演奏時はこのアドレスセンサーの働きによって指定した曲間までアームを移動させ、そこからデュアルアイセンサーに引き継がれ、サーボをかけながら曲間のセンターへ針を降ろします。
アーム駆動用には水平DDモーターとDCモーターを併用しています。
ターンテーブルの奥に収納されているトーンアームをレコードの中心まではDCモーターでリードアウトし、その後は水平DDモーターでレコードの曲間をサーチさせながらアームを外周に運んでスタンバイさせます。この2基のモーターによって滑らかで素早いアーム動作を実現しています。
特にモーターシャフトがそのままアーム回転軸に直結した水平DDモーターはサーボに対する応答速度が高く、緻密なオート動作を確実に行える設計となっています。
トーンアームには無共振設計のストレートアームを採用しています。さらに、バランスウェイトをアームの支点に近づけた質量集中方式によって低等価質量を実現しています。
マニュアル再生が可能です。
デッキシンクロ機能を搭載しており、別売りのシンクロケーブルを用いてパイオニアのカセットデッキ(CT-980、CT-880、CT-780、CT-580等)と接続する事でプレイヤーとの再生動作とカセットデッキの録音動作が連動します。
ターンテーブル駆動用モーターにはSH・ローター方式のコアレス&スロットレスモーターを採用しています。
SH・ローター方式ではローターの支点と重心をほぼ一致させる事でシャフトの逆円錐運動や潤滑油によって起こる回転滑りを根本的に追放しています。また、コアレス&スロットレス構造によって回転ムラの原因となるコギングを排除し、安定性の高いなめらかな回転を実現しています。
さらにサーボ回路にはパイオニアが新たに開発したハイゲインサーボ回路を採用しており、クォーツPLLの性能を十分に発揮する事で回転ムラ0.012%以下を実現しています。
カートリッジにはパイオニアが独自開発した発電構造を持つ高出力MCカートリッジを採用しています。
このカートリッジはMCカートリッジでありながら昇圧トランスやヘッドアンプを用いずにアンプのMMポジションに直接接続できます。マグネットとコイルは構造的に左右チャンネルをそれぞれ分離独立させており、左右の信号による相互干渉を排除し、優れたチャンネルセパレーションと低歪率を実現しています。
さらに、シンプルな構造となっているため針交換が可能となっています。
1982年の発売時にはシャンペンゴールドタイプのPL-88Fのみでしたが、その後シルバータイプのPL-88FSが発売しました。
機種の定格
型式 | レコードプレイヤー |
<ターンテーブル部> | |
モーター | コアレスクォーツPLL・DCサーボホールモーター |
軸受方式 | SH・ローター方式 |
駆動方式 | ダイレクトドライブ |
ターンテーブル | 28cm |
回転数 | 33・1/3、45rpm |
回転ムラ | 0.012%以下(WRMS/FG直読法) 0.025%以下(WRMS/JIS) |
S/N | 78dB以上(DIN-B) |
起動特性 | 1/3回転以内 |
回転数偏差 | 0.002%以内 |
ドリフト | 時間ドリフト:0.00008%/h以下 温度ドリフト:0.00003%/℃以下 |
<トーンアーム部> | |
トーンアーム | 水平DDスタティックバランスストレートアーム |
実効長 | 208mm |
オーバーハング | 20.2mm |
<カートリッジ部> | |
カートリッジ | MC型 |
針先 | 0.3x0.7mil楕円ダイヤ針 |
交換針 | PN-41MC |
出力電圧 | 1.5mV(1kHz、50mm/sec水平、PL-88F記載) 2.5mV(1kHz、50mm/sec、LAT.Peak、PL-88FS記載) |
適正針圧 | 2g±0.3g |
周波数特性 | 10Hz~35kHz |
<総合> | |
付属機構 | プログラム選曲 オートリードイン オートリターン オートカット マニュアルロケーション スキップ インデックススキャン(ノーマルインデックス、プログラムインデックス) オートリピート(ノーマルリピート、プログラムリピート) |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 12W |
外形寸法 | 幅420x高さ98x奥行335mm |
重量 | 10.3kg |
別売 | デッキシンクロ用ケーブル JC-60(¥1,200) |