Pioneer M-25
¥200,000(1977年頃)
解説
アンプの性能は可聴帯域内のみでなく、超広帯域にわたり低歪でフルパワー再生できなければならないという"マグニワイド・パワーレンジ"の設計思想のもとに開発されたステレオパワーアンプ。
超高域における低歪フルパワー再生を可能にするため、高域スイッチング特性にすぐれた集団トランジスターRET(Ring
Emitter Transistor)を開発・採用しています。このトランジスタは高周波特性に優れた小電力用トランジスタを数百個並列合成したもので、小電力トランジスタの高速スイッチング特性を損なうことなく破壊強度を上げて大電力化を図っています。
構造的にはエピタキシャル・プレーナ型トランジスタで、ベース電極の周囲にドーナツ状のリングを形づくってエミッターが配列されているためリングエミッタトランジスタと名付けられました。
RETはスイッチング特性が通常のパワートランジスタに比べて極めて優れ、信号の応答性がよく、キャリア蓄積の少ない特性を持っています。
超低域に対しても極小の歪率で充分なパワーを確保するためDCアンプ構成を採用しています。DCアンプ構成はNFB回路にコンデンサを持たないため、超低域まで過渡歪や位相歪を追放しています。
さらに、十分なパワーを確保するため、左右独立の大型トランスと22,000μFx4の大容量コンデンサーによる大型電源部を搭載しています。
M-25では3WまでをA級動作とし、それ以上の出力ではAB級動作をさせています。これにより音質と大出力の両立を図っています。また、電力の利用率は一般のB級アンプに近い高能率なので、音楽信号のピーク成分もゆとりをもって再生しています。
アンプ内部の低インピーダンス化を徹底するため、電源コンデンサーからスピーカー端子までのアース側に、幅12mm、厚さ1mmの純銅板を使用しています。また、大電流が流れる整流器からスピーカー端子までのホットラインには、抵抗値が従来の太線の1/4になる極太14番線(2.03φヨリ線)を使用し、さらに電源コンデンサーの充電能力をアップさせることで急激な電流の変化にも十分対応させています。
さらに、各回路基板の銅箔を70μに倍増したほか、2個のパワートランジスタのコレクタを幅12mm、厚さ1.2mmの純銅板のショートバーで接続するなど低インピーダンス化を図っています。
左右チャンネル間のセパレーションを抑えたモノコンストラクションにより高セパレーションを実現しています。
入出力端子だけでなく、基板上の端子にも金メッキが施されています。
また、保護回路のパワーリレーでは、小電流用と大電流用の2つの接点を持つ親子リレーを採用しており、接点の劣化を防いでいます。
機種の定格
型式 | ステレオパワーアンプ | ||||
回路方式 | 初段差動カレントミラー負荷3段ダーリントン パラレルプッシュプル純コンプリメンタリーOCL回路 (AB級動作、DCアンプ構成) |
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実効出力(両ch駆動) |
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高調波歪率(5Hz~30kHz、8Ω) | 実効出力時:0.01% 60W出力時:0.01% 1W出力時:0.007% |
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混変調歪率(50Hz:7kHz=4:1、8Ω) | 実効出力時:0.006% 60W出力時:0.005% 1W出力時:0.005% |
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出力帯域幅(IHF、両ch駆動) | 5Hz~45kHz(歪率0.01%) 5Hz~100kHz(歪率0.05%) |
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周波数特性 | 5Hz~200kHz +0 -1dB(1W出力時) | ||||
入力端子 | Input:1V/50kΩ | ||||
出力端子 | Speaker:4Ω~16Ω | ||||
ダンピングファクター | 100 (20Hz~20kHz、8Ω) | ||||
SN比(IHF、Aネットワーク、ショートサーキット) | 120dB | ||||
チャンネルセパレーション | 1kHz:105dB 100kHz:70dB |
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使用半導体 | トランジスタ:55個 ダイオード、他:53個 |
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電源電圧 | 100V、50Hz/60Hz | ||||
消費電力 | 280W(電気用品取締法) | ||||
最大消費電力 | 800W | ||||
外形寸法 | 幅420x高さ153x奥行370mm | ||||
重量 | 22.5kg |