Nakamichi 610
¥130,000(1976年頃)
解説
録音のための最高のプリアンプをめざして開発されたプリアンプ。
イコライザアンプ部の入力段はトリプルトランジスタサーキットを採用しており、SN比を向上させ、ダイナミックレンジを拡大しています。また、カレントドライブ方式のドライバー段を採用することで低歪率を実現しています。
さらに、温度特性の優れた金属皮膜抵抗やコンデンサーなどのクオリティの高いパーツを使用することでRIAA偏差を抑えています。
マイク入力にも配慮がされており、ステレオ2系統4チャンネルのそれぞれにマイクアンプを設けています。
マイクアンプ部は1kΩ0dB時で0.2mVの感度となっており、15dB、30dBのアッテネーターを装備し、S/Nが悪化しないよう独特な回路設計を採用しています。
ダイナミックマージンはアッテネーター0dB時で+46dBと十分なゆとりをもたせています。
ヘッドホン用にも専用のモニターアンプを搭載しています。
回路方式は差動入力ピュアコンプリメンタリーOTL方式を採用しており、8Ωから200Ωまでのヘッドホンをゆとりを持って駆動できます。
徹底したユニット化をはかっており、従来のコード配線による回路同士の干渉と音質低下を低減しています。
電源部にはリーケージフラックスの少ないトロイダルトランスを使用しています。
100~120V/220~240Vの2段電圧切り換えスイッチを採用しています。
5つの入力レベルを一括コントロールできるマスターボリュームを搭載しています。
このボリューム部には連動誤差±0.5dBの金属皮膜抵抗を採用しています。
フェードイン/フェードアウトに活用できるメモリーマーカーを搭載しています。
19チャンネルの接続が可能となっており、ステレオマイク2系統、ブレンドマイク1系統の5チャンネルと、フォノステレオ2系統4チャンネル、デッキステレオ3系統6チャンネル、チューナー1系統2チャンネル、Aux1系統2チャンネルの接続が可能です。また、任意のステレオソース2系統とブレンドマイクの5元ミキシングが可能です。
これにより、マイク5本のミキシングや、マイク3本とフォノ1台のミキシング、テープデッキ2台とブレンドマイクのミキシング、テープデッキ2台からの録音、フォノ2台のフェードイン/アウトを用いた切換再生が可能です。
テープ回路は3台のテープデッキが接続でき、3台同時録音や相互間ダビング、他の入力ソースとのミキシング、テープ同士のミキシング編集などが可能です。
また、どれか一つをモニターする場合テープモニタースイッチ(1/2/3)で選択でき、モニター中はデッキは自動的に録音入力がカットされ、回り込みによる発振を防止しています。
ピンクノイズを含む8種類のテストトーンの出力が可能となっており、これを用いた測定や調整、テストが可能です。
例えば、ドルビーなどに必要な基準レベルの調整、2台のデッキによるダビング/コピー時のレベルマッチング調整、驟雨は数特性の測定、テープデッキのバイアス調整が可能です。
ピークレベルメーターを搭載しています。
このレベルメーターは2つに分割された対数型増幅器によって対数圧縮されるため、指示誤差がありません。回路のアタックタイムは120msec.と非常に速い立ち上がりで、2secのゆっくりとしたレリースタイムを持っています。
位相チェックと位相反転機能を搭載しており、ワンタッチで逆位相に切り換えられます。
別売りのリモートコントロールユニットRM-610を用いることで、パワーアンプ1台で3系統のスピーカー切り換えや、3台のパワーアンプ切り換えが可能です。
別売りで組込用ラックがありました。このラックは600シリーズ用にデザインされたもので、600Bカセットデッキや620パワーアンプなどを610と一緒にマウントすることができます。
また、600シリーズ用のウッドキャビネットも別売りオプションとして販売されました。
機種の定格
型式 | コントロールアンプ |
入力感度/インピーダンス | Mic:0.2mV/1kΩ(アッテネーター:15dB、30dB) Phono:1mV/200Ω、50kΩ、100kΩ切換 Aux、Tuner:75mv/25kΩ Tape PB:230mV/75kΩ Tape monitor:316mV/75kΩ |
最大入力レベル | Mic:1V(+74db、アッテネーター:30dB) Phono:250mV(+48dB) Aux、Tuner、Tape PB:50V |
基準出力レベル(0dB)/出力インピーダンス /負荷インピーダンス |
Monitor out:1V/100Ω/1kΩ以上 Line out:316mV/600Ω/1kΩ以上 Rec out:316mV/2.2kΩ/50kΩ以上 Headphone:40mW/8Ω/8Ω~200Ω |
最大出力レベル(クリッピングレベル) | Monitor out:5V/1kΩ Line out:5V/10kΩ Rec out:5V/50kΩ Headphone:300mW/8Ω |
周波数特性 | Mic:30Hz~100kHz +0 -1.5dB Phono(RIAA偏差):30Hz~15kHz ±0.3dB Aux、Tuner:20Hz~100kHz +0 -1.5dB Tape PB:10Hz~50kHz ±0.3dB Monitor out:5Hz~150kHz +0 -1.5dB |
S/N比(IHF-A)(基準レベル)/入力換算比 | Mic:53dB以上(0dB)/-127dB 65dB以上(アッテネーター15dB) Phono:80dB以上(1mV)/-140dB 90dB以上(3mV) Aux、Tuner、Tape PB:85dB以上(Vol max) 93dB以上(Vol min、入力オープン) |
残留ノイズレベル(Line out、IHF-A) | Headphone(8Ω):4μV以下 Line out/Rec out:7μV以下(Vol max) 15μV以下(Vol -30dB) |
歪率(Vol -20dB、Level vol max、 Line out2V) |
Mic:0.01%以下(f=10kHz以下) Phono:0.005%以下(f=10kHz以下) 0.002%以下(f=1kHz) Aux、Tuner、Tape PB:0.005%以下 |
<テストトーン> | |
発振周波数 | 1k、3.16k、4.16k、10k、11k、13.16k、14.16kHz (スイッチ組合せによる) ピンクノイズ |
発振器歪率 | 1kHz~14.16kHz、0.2%以下 |
ピンクノイズ | 50Hz~15kHz ±2dB(1/3オクターブフィルター) |
<レベルメーター> | |
指示範囲 | -40dB~+10dB |
指示誤差 | -20dB~+10dB:±1dB -40dB~-20dB:±2dB |
周波数特性 | 50Hz~20kHz +0 -1dB(-30dB~+10dB) |
<総合> | |
使用半導体 | FET:2個 トランジスタ:134個 ダイオード:27個 ツェナーダイオード:5個 IC:2個 |
ACアウトレット | Switched:2系統(350VA) |
電源 | AC100V~120V/220V~240V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 最大20VA |
外形寸法 | 幅400x高さ170x奥行237mm |
重量 | 約7kg |
別売 | 専用リモートコントロールユニット RM-610(¥18,000) 600シリーズ組込ラック SYSTEM-ONE(¥25,000) 600シリーズ用ウッドキャビネット(¥11,000) |