Nakamichi OMS-70II
¥288,000(1986年頃)
¥270,000(1989年頃)
解説
D/A変換時に発生するグリッチの抑制を図ったCDプレイヤー。
D/A変換部には新開発のグリッチフリーD/Aコンバージョンシステムを採用しており、サンプルホールド回路の排除を実現しています。
一般的なCDプレイヤーのアナログ回路では、D/Aコンバーターに続いてサンプルホールド回路が設けられており、その後アナログローパスフィルターがくる構成となっています。このサンプルホールド回路では、D/Aコンバーターから出力されたアナログ波形に見られるグリッチと呼ばれる細かいひげ状のデジタルノイズをミュートして取り除き、きれいな信号だけをサンプリングしてホールドしています。しかし、サンプルホールド回路はアナログスイッチやコンデンサーなどの音質的に好ましくない素子で構成されており、スイッチ自身の内部抵抗やスイッチングノイズの混入、コンデンサーによる音質劣化などが発生していました。
グリッチフリーD/Aコンバージョンシステムでは、デジタルフィルターによって4倍オーバーサンプリングされた16ビットデジタル信号はまずフォトカプラーを通過してサーボ系のノイズを遮断します。次にデータのシリアル/パラレル変換を行い、パラレルデータの状態でホールドされた後、各ビットがLch/Rch同時に出力します。ここでグリッチの発生を防ぐためデジタルでグリッチング回路によって各ビットのスイッチが同時に動作するようD/Aコンバーターに対して厳密なコントロールを行い、グリッチの発生をほぼゼロに近づけています。
これによりD/Aコンバーター単体での歪率も0.0015%以下という優れた値を実現するとともにアナログ部からサンプルホールド回路を追放しています。
デジタルフィルターには16ビット4倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターを採用しています。
44.1kHzのPCM信号を4倍の176.4kHzにオーバーサンプリングすることによって不要雑音の下限を156.4kHzに追いやっています。これにより3次という極低次のリニアフェイズ・ベッセルフィルターを使用でき、優れた位相特性と過渡応答特性を実現しています。
D/Aコンバーターにはニクロム薄膜による高精度なラダー抵抗網を内蔵した16ビットハイスピードD/Aコンバーターをデュアル構成で使用しており、デジタルフィルターでオーバーサンプリングされた16ビットのデジタル信号をそのまま処理するスピードと高い変換精度を達成しています。
デジタルフィルターの後にフォトカプラーによる光伝送方式を採用しており、グランドループを伝わるデジタルノイズの混入を抑えています。
デジタル回路は部品の大幅なIC化を推進することで回路の小型化を図り、ノイズ発生の低減を図っています。また、アナログ回路は大型の基板を採用して各回路ブロックをゆったりとレイアウトしています。さらにアナログ基板をアルミシールドケースで密封することで空気中から飛び込むノイズから音楽信号を保護しています。
さらに、基板内でもD/Aコンバーターとアナログフィルターの間にはパワーサプライ用の純銅バスバーを3重に配してシールド効果をもたせています。
電源部はアナログ回路(フォトカプラー以降)とデジタル回路(サーボ、ロジックコントロール)にそれぞれ独立したトランス巻線を持たせ、整流回路もセパレートしています。さらにデジタル回路の電源ラインにラインフィルターを挿入することで、トランス内部での巻線間容量によるアナログ回路へのノイズ混入も防止しています。
さらに、アナログ回路での対策として、アナログ部専用巻線からマスターパワーレギュレーターでひとまず定電圧化し、その後L/Rチャンネルそれぞれ各ステージごとに独立したローカルパワーレギュレーターを配してさらに定電圧化するという2段構成の電源供給となっています。しかも、ローカルパワーレギュレーターとマスターパワーレギュレーターは帰還ループを持たないNon-NFB電源となっています。これはパワーアンプの低NFB化に通じるもので、各ステージ間の電圧変動による影響を抑えています。アナログフィルター以外のステージでは、リレー回路やヘッドホンアンプなどにもローカルパワーレギュレーターを配置いています。
各レギュレーターはICを使用せず、全てトランジスタによるディスクリート構成を採用しており、電源のグレードを信号系と同等に重視した設計となっています。
アイソレーテッド・グランド方式を採用しており、アースラインの設計にも十分な配慮が加えられています。
一般的な回路では各ステージの電流をプラス→グランド、グランド→マイナスと流しますが、信号グランドに各ステージからの様々な電流が流れこむと基準となるグランド電位が変動し、各ステージにフラレの影響が及び、ステレオイメージが損なわれたり、音が濁ります。
OMS-70IIでは電源ラインにFETによるバッファを組み込み、電流をプラス→マイナスと流れるようにし、グランドは基準電位を規定するだけの働きを行うよう設計しています。これにより電流にノイズや汚れた成分が乗っていた場合にもグランド電位には影響が及びません。まt,あグランドに電流が流れこまないことで電源の直流安定性も向上しています。さらに、安定化電源にはDCカップリングコンデンサーの代わりに音質への影響が少ないツェナーダイオードを使用しています。
アナログフィルターにはカットオフ周波数30kHzの3次アクティブ型リニアフェイズ・ベッセルフィルターをディスクリートで採用しています。
ベッセルフィルターは2段のDCアンプ構成で、アンプの裸特性を可能な限り高めたため、わずかなNFBをかけるだけで0.0003%もの低歪率を実現しています。左右チャンネルは完全左右対称となっており、各チャンネルの前段、後段はそれぞれ独立したレギュレーターから電源供給を受けており、チャンネル間の相互干渉が抑えられています。
使用パーツは金属皮膜抵抗やマイカコンデンサ、セラファインコンデンサ、完全無誘導型コンデンサなど、聴感テストで厳選したハイグレードのオーディオ専用品を採用しています。また、NFB用抵抗には黄銅キャップタイプを採用しています。
各段の入力部はHi-gmデュアルFETによる差動入力としており、金メッキピンジャックは配線による音質劣化を防ぐためアナログ基板に直付けとしています。
ピックアップ部には中央のメインビームの情報ピックアップ能力を高めた3ビーム方式/非点収差法レーザーピックアップを採用しており、エラー補正に頼る以前にディスクからより正確な情報を得ることに留意しています。
また、サーボ回路には新開発のデジタル信号処理LSIを採用しています。このLSIはディスク製造時の傷によってレーザーピックアップからのRF信号にドロップアウトがあった場合、傷を通過するまでフォーカスホールドを行う機構を内蔵しており、傷に起因する音飛びやスティック状態を避ける働きを持っています。
信号処理を行う複数のLSIは一つの水晶振動子に同期するマスタークロック方式を採用しており、クロック同士の相互干渉によるビートノイズ発生を防止しています。
内部共振や外部振動の影響を抑えるため、ディスクチャッキングに工夫を凝らしています。
まず、ディスクドライブメカニズムは亜鉛合金ダイキャストシャーシに直付けすることで剛性を高め、メインベースシャーシおよびディスクローディング機構から独立しています。しかも、スプリングとダンプ材によってメインベースシャーシから完全にフローティングさせ、内部共振や外部振動の影響を受けにくい構造としています。
また、ディスクをホールドするチャッキングアームはマグネットチャック方式を採用しており、ディスク装着時に永久磁石によってディスクを確実に固定してアームが完全にディスクから離れるようにし、シャーシ振動のディスクへの伝達を防いでいます。さらに、ユニークなセンタリング機構によってディスク偏心による読み取りエラーを防止しています。
24曲プログラムメモリー機能を搭載しており、トラックナンバーやインデックスナンバーをプログラムし、再生順序を自由に入れ替えてメモリー再生が可能です。
タイム/トータルタイム/タイムリメイニング表示機能を搭載しています。
ディスクをローディングするとトータルトラック数とトータル演奏時間を約5秒間表示します。通常の再生状態ではタイムカウンターの表示をTime/Total
Time/Time Remainingの3種類に切換えできます。
また、OMS-70IIではメモリー再生時にメモリーしたプログラムに対してもこの3種類の表示が可能です。
ディスプレイ部にはFL管を採用しています。
ヘッドホン出力端子とヘッドホン出力調整用ボリュームを搭載しています。
金メッキ出力端子を採用しています。
ダイレクトトラックサーチ機能を搭載しており、フロントパネルの10キーを用いてダイレクトに希望の曲を指定して再生できます。
インデックスサーチを搭載しています。
スキップサーチ、ダブルスピードキューイング、リピートプレイ、ダイレクトオペレーションなどの機能を搭載しています。
システムリモート端子を搭載しており、コントロールアンプCA-70を接続すると、CA-70付属のワイヤレスリモコンで操作が可能です。
ワイヤレスリモコンが付属しています。
このリモコンでは電源ON/OFFを除く全ての操作が可能です。
機種の定格
型式 | CDプレイヤー |
読取り方式 | 非接触光学式(半導体レーザー使用) |
エラー訂正方式 | CIRC方式 |
チャンネル数 | 2チャンネルステレオ |
標本化周波数 | 44.1kHz |
量子化 | 16ビット直線 |
ディスク回転速度 | 約200~500rpm(線速度一定) |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
周波数特性 | 5Hz~20kHz ±0.5dB |
S/N比 | 104dB以上(IHF A-WTD) |
ダイナミックレンジ | 96dB以上 |
全高調波歪率 | 0.0025%(1kHz) |
全高調波歪率+雑音 | 0.0035%(1kHz) |
チャンネルセパレーション | 100dB以上 |
出力 | Line:2V/100Ω(1kHz、0dB) Headphone:35mW以上、40Ω負荷(1kHz、0dB) |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
消費電力 | 最大25W |
外形寸法 | 幅435x高さ100x奥行308mm |
重量 | 約7.4kg |
付属:リモートコントロールユニット RM-7CD | |
方式 | 赤外線パルス式 |
電源 | DC3V(単3電池x2) |
外形寸法 | 幅63x高さ18x奥行135mm |
重量 | 約100g(乾電池含む) |