DENON TU-355
¥75,000(1975年頃)
解説
ドラム式チューニングシステムを採用したFMステレオチューナー。
ダイヤル部にはドラム式チューニングシステムを採用しています。
この方式では直径12cmのドラムをダイヤル部に採用しており、パネル占有面積を小さくしながらスケールを長くしています。目盛りの全走行長(75~91MHz)は28.3cmと長く、周波数比例型バリコンとあいまって一目盛り200kHzの等間隔と見やすくなっています。
ダイヤル回転機構には高精度のステンレスシャフトと合金軸受を使用しているため、使用頻度の高いチューニングつまみも初期の滑らかさを永く保ちます。
同調指示はシグナルメーターとセンター式チューニングメーターの2メーター式となっています。
左端の大型メーターがシグナルメーター兼用となっており、アンテナ端子の入力電圧を読み取る事ができます。
左右のレベルメーターは独立した測定器としても使用が可能です。
入力インピーダンスは200kΩと高く、フロントのExternal Attを切替えて、ほぼ-30dB(24.5mV)から+33dB(34.6V)までのオーディオ定常信号電圧を測ることが可能です。
また、レベルメーターを装備していないアンプと組み合わせる事でアンプの出力計として使う事ができます。
フロントエンド部では、入力信号はまずバリコン1連の単同調回路を通し、すぐにデュアルゲートMOS-FETの高周波増幅を行い、微弱な電波に対する高いS/Nを保持しています。
そのあとバリコン3連のトリプルチューン回路を通し、デュアルゲートMOS-FETで局部発振周波数と混合増幅します。適度な利得設定で強い電波にも歪まず、ブロッキング現象を起こさない構成としています。
局部発振回路には変形クラップ形発振回路を採用しています。この回路はコレクタ接地形なのでトランジスタが電圧変動や温度変化の影響を受けにくく、出力は高調波が少ないなど、多くの特長があります。
さらに温度補償コンデンサや耐温・湿特性の発振コイルなどを採用し、しかも発振出力は混合用デュアルゲートFETの第2ゲートにバッファーアンプ1段を通して注入する形なため、発振周波数が極めて安定しています。これにより問題のあるAFC回路を消去しています。
IF部は2系統で構成されており、本来の増幅部と、シグナルメーターやマルチパス垂直出力端子及びミューティング回路などのコントロール系のための副増幅部とで構成されています。この構成によって主IF部での新たな高調波や位相変調波、混変調障害の発生を低減しています。
主増幅回路はダイナミックレンジが広いトランジスタによる差動増幅を通過したあと差動増幅三段直結のIC-2組を主体に直線性の良い多段増幅を形成しています。その間の結合・選択素子にはセラミック2素子形で選択度が高く、音質を重視した位相特性平坦のフィルター4組を使用しています。そして最終のFM検波には出力インピーダンスが低く広帯域向けのレシオ検波回路を採用しています。
MPX部にはPLL回路を採用しています。
低周波増幅部は左右チャンネルともに2段直結増幅回路の設計となっています。
また、不要になったパイロット信号や副搬送波などのリークはLC3段構成のローパスフィルターでカットします。
ミューティングスイッチやハイブレンドスイッチを搭載しています。
ファンクションセレクターにはMono、Autoに加えてStereo-Onlyのポジションが設けられています。
これは放送の中からステレオ番組だけを選ぶのに便利な機能です。
別売りオプションとしてウッドキャビネットがありました。
機種の定格
型式 | FMチューナー |
<チューナー部> | |
回路方式 | デュアルゲートMOS FET使用、RF1段、5連バリコンのフロントエンド 2素子位相平坦型フィルター4個使用IF段 |
受信周波数範囲 | 76MHz~90MHz |
中間周波数 | 10.7MHz |
実用感度(IHF) | 1.7μV |
S/N 50dB感度 | 33μV |
実効選択度(2信号法)) | 85dB(IHF) |
イメージ妨害比 | 120dB(83MHz) |
IF妨害比 | 110dB(83MHz) |
キャプチャーレシオ(IHF) | 1.0dB |
スプリアスレスポンス | 110dB(83MHz) |
AM抑圧比 | 60dB(IHF) |
<オーディオ部> | |
回路方式 | フェーズロックループ式ステレオ復調回路採用 |
19kHz & 38kHz抑圧比 | 75dB以上 |
周波数特性 | 20Hz~15kHz +0.2 -0.5dB(19kHzフィルター付き) |
SN比 | mono:80dB stereo:75dB |
全高調波歪率 | stereo:0.15%(1kHz、90%変調時) mono:0.1%(1kHz、100%変調時) |
ステレオセパレーション | 45dB(1kHz) 40dB(100Hz~10kHz) |
出力電圧(100%変調時) | 固定:1Vrms 可変:0V~1.5Vrms |
出力インピーダンス | 固定:4.7kΩ 可変:1kΩ |
<レベルメーター部> | |
外部信号測定レンジ | -20、-10、0、+10、+20、+30dB(0dB、0.775Vrms) |
入力インピーダンス | 150kΩ以上 200kΩ以上(別カタログ記載) |
指示誤差 | ±0.2dB以内(各レンジ、1kHz、VU目盛0付近) |
周波数特性 | 20Hz~15kHz ±0.5dB |
<総合> | |
接続端子 | アンテナ端子:75ΩF型コネクター、300Ω、75Ω、ネジ式 マルチパス検出端子、検波出力端子(4ch&SCA用出力)、オーディオ出力端子(固定・可変) レベルメーター外部端子、同パス端子 |
電源 | AC100V、50Hz/60Hz |
ACソケット | Unswitched 250Wmax、1系統 |
消費電力 | 16W |
外形寸法 | 幅396x高さ147x奥行281mm |
重量 | 6.8kg |
別売 | ウッドキャビネット ACA-5(¥5,000) |