Accuphase C-290
¥880,000(1993年11月発売)
解説
C-280Vで開発されたバランス伝送技術をベースに、さらに全回路を見直し全素材・パーツを徹底的に吟味し、磨きぬくことで最高峰を目指したプリアンプ。
ラインアンプにはバランス伝送回路を採用しています。バランス伝送は、互いに位相が反転した正負対称信号を同時に送る方式で、コモンモードの雑音成分を除去する能力に優れています。
C-290では3個の差動アンプで構成されており、バランス時はamp1の+−両入力から信号が入り増幅され、次のamp2、amp3に入力されます。この2組のアンプは、それぞれの出力を相手側にフィードバックするたすき掛けの関係にあり、+−の対称信号を低いインピーダンスで送り出します。
この回路の特長は、+−の対称信号はグランドからフローティングされた回路方式で、出力の片側をアースしても両方のアンプが作動して、出力電圧が変化しません。そのため、通常のアンバランス接続時は入出力ともに単にどちらかをグランド(アース)ラインに接続するだけとなります。
全ユニットアンプをアキュフェーズのオリジナル、対称型プッシュプル回路で構成しており、入力回路はカスコード・ソースフォロアーで、超高域まで安定した動作を実現しています。
さらに、次段の差動コンプリメンタリー・プッシュプル回路をモジュール化しており、モジュール材には熱伝導がよく、高周波特性も良いアルミナ磁器基板を採用しています。これにより低雑音で、熱的・電気的な安定度が高く、信頼性を向上しています。
出力段はコンプリメンタリー・ダーリントン・プッシュプルで低出力インピーダンス、大振幅まで優れたリニアリティを維持しています。
基板には、ガラス布基材PRO(Polyphenylene Oxide)樹脂によるプリント板を採用しています。
この材料は、四フッ化エチレン(フッ素)樹脂基材と殆ど同レベルの電気特性を持ったもので、誘電率が低く、高周波特性が優れ12GHzまで性能が補償されてます。
さらに銅箔面には金プレートを施し、さらに音質の向上を図っています。
電源トランス、フィルターコンデンサーとも左右独立し電気的に完全にモノフォニック構成となっています。さらに全ユニットアンプに広帯域定電圧電源を搭載し、アンプ間の相互干渉を防止しています。
また、電源トランスには周波数特性の優れたアモルファス・コアを採用しています。アモルファスは溶融金属を超急冷することにより得られる合金薄帯で、結晶構造を持たない非結晶金属なため、結晶構造金属に比べ磁器的・機械的に優れた性質を持っています。主な特徴として、最大磁束密度が大きいため過電流特性が優れている。磁気回路特有のキュリーポイント(磁気特性が急変する温度)が高いため温度変化によるコアへの影響が殆ど無い。ヒステリシス損失や過電流損失などの鉄損が少ないため発熱が小さい。などがあります。
C-290に使用したアモルファスは、厚み25μmのFe系コアとなっています。
ボリュームにはC-280Vにも採用されたCP(コンダクティブ・プラスチック)素子を抵抗体に用いた4連動音量調節器を採用しています。
CP抵抗体は抵抗素子を印刷後、高温加圧整形することにより表面は鏡面状に仕上げられ、低接触抵抗、低歪率を実現しています。また、抵抗体と接触するブラシは金メッキ多接点型で、外部端子と一体構造にして金属接合面を無くし、異種金属が接触することによる歪を低減しています。
回転方式はブラシが回転する一般的な方式ではなく、抵抗体が回転するという構造を採用しており、内部の接触点を大幅に減らし、接点グリースも不要となることで耐久性が向上しています。
直径8mmの極太真鍮シャフトをアルミ切削軸受けで支持し、4個の素子をそれぞれ高精度アルミ切削ケースに収納して完全なシールドを施し、音質の向上を図っています。
可変方式は連続可変型で、トラッキングエラーは-60dBの位置で実測0.5dB以内となっています。
入力信号の切替えには、ロジック・リレーコントロール回路を採用しています。
切替えが必要な場所にリレーを設置し、これらをロジック回路で電子的にコントロールする方式により、信号経路の引き回しによる音質劣化や、セレクターによる直接切替で問題となる接点劣化を防いでいます。
また、この回路に持ちいるリレーには、オーディオ用、通信機用として特に開発された窒素ガス封入の完全密閉構造リレーを採用しています。音質に影響を与える接点は金および銀パラジウム合金のクロスバー・ツイン方式で、低接触抵抗、高耐久性を得ています。
ラインやバランスアンプ回路など左右合計4ユニットアンプのそれぞれに、専用定電圧電源部が付属した構成となっています。これらのユニットアンプが相互干渉するのを防ぐため、厚手のアルミハウジングに収納しており、出力と定電圧電源の素子は放熱を兼ねてハウジングにしっかりと固定し、振動による共振も防止しています。
全体の構造は、8mm厚の硬質アルミによる枠組み構造で、これに厚手ガラスエポキシのマザーボードがしっかりと固定され、この上にアルミハウジングがネジで固定されてます。
チャンネルバランスを完全にし、任意のリスニング・ポジションで定位をコントロールできる1dBステップのアッテネーターを搭載しています。
操作は左右の押しボタンでそれぞれ0から-6dB及び-∞まで変化させることができ、パネル面の文字ディスプレイ上に表示されます。
装置全体の位相を反転させるフェーズ・スイッチを搭載してます。
切替方法はバランスアンプ入力部の+−を入れ替えるだけなため、位相反転器のような付加回路が無いため音質劣化がありません。
小音量時の量感不足を改善するため、コンペンセータースイッチを搭載しています。
音量調整器の位置によって自動的に特性を補正し、自然なバランスを保ちます。
超低域ノイズをカットするサブソニックフィルターを搭載しています。
電源回路を構成し、音質に大きな効果を与える電源コードに、6N高純度銅線を採用しています。
また、電源をコネクター方式にすることで、市販の電源コードにも対応しています。
C-280はCDなどのライン専用構成となっていますが、別売りの専用フォノイコライザー・ユニットによりレコードへの対応が可能です。
ラインとバランスのユニットアンプはC-280Vに搭載することが可能です。
C-280Vのライン・バランスアンプ・ユニット(4個)を交換することにより、音質の変化を楽しむことができます。
機種の定格
AD入力特性はその他カテゴリのAD-290を参照して下さい | |||||||||||||||||
型式 | ステレオプリアンプ | ||||||||||||||||
周波数特性 |
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全高調波歪率 | 0.005%(全ての入力端子にて) | ||||||||||||||||
入力感度/インピーダンス (定格出力/0.5V出力時) |
Balanced:252mV/63mV/40kΩ(20kΩ/20kΩ) Unbalanced:252mV/63mV/20kΩ |
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定格出力/インピーダンス | Balanced output:2.0V/50Ω Unbalanced output:2.0V/50Ω Tape rec:252mV/200Ω |
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S/N・入力換算雑音 |
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最大出力レベル (歪率0.005%、20Hz~20kHz) |
Balanced output:8.0V Unbalanced output:8.0V Tape rec:9.5V |
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最小負荷インピーダンス | Balanced output:600Ω Unbalanced output:600Ω Tape rec:10kΩ |
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ゲイン | Balanced input→Balanced output:18dB Balanced input→Unbalanced output:18dB Unbalanced input→Balanced output:18dB Unbalanced input→Unbalanced output:18dB Unbalanced input→rec output:0dB |
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ラウドネスコンペンセーター (Volume -30dB) |
1:+3dB(100Hz) 2:+8dB(100Hz)、+6dB(20kHz) |
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サブソニックフィルター | 10Hz、-18dB/oct | ||||||||||||||||
アッテネーター | -20dB | ||||||||||||||||
電源電圧 | AC100V/117V/220V/240V、50Hz/60Hz | ||||||||||||||||
消費電力 | 30W | ||||||||||||||||
最大外形寸法 | 幅475x高さ149x奥行405mm AD-290増設時:奥行414mm |
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重量 | 23.8kg AD-290増設時:24.8kg |
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別売 | 専用フォノイコライザーユニット AD-290(¥200,000) |